大田区無防備平和条例案に反対した大田区長意見書批判(総論)
                      大田無防備平和条例の会

 7月12日、大田区長は区民が制定を求めた「大田区無防備平和条例案」に対し
反対の意見書をつけて区議会に議案告示しました。
 大田区長意見書の特徴は、わずかA4の用紙1枚程度の、しかもその8割以上が
事実と国の見解を並べた薄っぺらな内容です。意見といえば国の見解にしたがっ
て反対という大田区の自治も平和行政の哲学も無いまことに情けない内容です。
憲法、地方自治法、国際人道法(ジュネーブ条約)そして何より区民の切実な平
和への強い思いをまったく検討していないといえます。

 第1に批判されるべきは、平和行政をやる気がないことです。大田区平和都市宣
言があるからと、わずかばかりの「非核平和と国際交流に関する施策」でよしと
し、平和の条例をつくる姿勢がないのです。

 第2に、意見書の中身ですが、無防備地域の4条件である、戦闘員の撤退、兵
器と軍用物の撤去などは大田区の権限ではないことあげ、無防備地域宣言は無理
と判断していることです。軍隊(自衛隊)の指揮権は国にありますが、ジュネー
ブ条約の解釈書(赤十字国際委員会)2283では、無防備地域宣言が「町長、市
長、知事といった地方民生当局から出されることさえありうる」と明確にしてい
ます。そのさい「軍当局との完全な合意がなされる」こととしています。大田区
が政府や軍当局に対して、大田区に軍隊・軍用物を配備するなと要求し合意をと
ることで、宣言の条件は整備できます。地方自治体は、住民の生命・財産を守る
立場から政府に軍隊などを入れず撤去を求めることは出来ます。現にそのように
している自治体はあります。
 その法的根拠となるのがジュネーブ条約(国際人道法)であり「大田区無防備
平和条例」なのです。ジュネーブ条約第一追加議定書は2004年6月第159国会で
批准承認され、05年2月28日発効し、国内法として効力を発揮しています。同条
約第4編「文民たる住民」の48条以下に文民保護の原則と予防措置が細かく規定
されています。たとえば「人口の集中している地域又はその付近に軍事目標を設
けることを避けること」(58条)と書かれており、これを根拠に大田区に軍を入
れさせない要求が出来ます。こういう普段から憲法にもとづく非武装のまちづく
りをするか否かが問われているのです。大田区長が自衛隊の指揮権を持っていな
いことは誰も分かっています。要点は大田区が軍当局と合意をとる努力をするの
か否かにあるのです。最初から、権限ありません、何もしませんでは、国内法と
なったジュネーブ条約無視、住民の生命・財産を守る責任の放棄です。

 第3に、政府の答弁(見解)である「地方公共団体がこの条約の無防備地域宣言
を行うことはできない」という文言を引用し、これを鵜呑みにして条例案反対の
根拠にしています。この政府答弁自身が、国際的には通用しない間違った解釈で
あり、先にあげた赤十字国際委員会の解釈が正しいものです。政府見解を鵜呑み
にしてしまうこと自身が、地方自治の放棄です。

 第4に、「地方自治法第14条第1項の規定に抵触する」といきなり短絡的に条例制定反対としていますが、まったくの根拠不明です。あげられた地方自治法の規
定には次のように書いてあります。「普通地方公共団体は、法令に違反しない限
りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる」。抵触す
るというなら、どの法令に違反するのか示さなければなりません。どの法律のど
こに無防備地域宣言をしてはならないと書いてあるか示さなければなりません。
この根拠を示さない意見書は、不勉強であるばかりか、まったくの無内容です。
意見書の文脈からすると、政府見解をよりどころとしているように読めますが、
政府見解は法令ではありません。政府見解など、政権が変われば、その時々でコ
ロコロ変わる性格のものです。

 先に触れたとおりジュネーブ条約は、すでに国内法としての効力を持っていま
す。この法を具体化する条例は、地方自治法に抵触することなど一切ありませ
ん。
                       2006年7月13日作成